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無尽から発展した信金、信組の今

日本の金融界では長年、都市銀行と呼ばれる大手銀行が君臨してきました。かつては十三行あったものが、現在では「メガバンク」と称されて三行にまで減少しています。MUと略されることもある三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、SMBCで代替されることもある三井住友フィナンシャルグループの三つです。これに準メガと呼ばれる、りそなホールディングスと、信託銀行のトップである三井住友トラストを加えて、五大銀行という呼び方が現在ではなされています。この旧・都市銀行の下に位置しているのが地銀(第一地方銀行)、次いで第二地銀(第二地方銀行)、さらには信用金庫、信用組合と続きます。

地銀は戦後、地方の金融機関が統合して都道府県単位で再編されたものであり、二〇一一年秋現在で六三行あります(新銀行東京、第二日本継承銀行は含めません)。第二地銀は、戦前、無尽という零細金融を行っていた金融機関が相互銀行に衣替えして誕生したものが主体ですが、信用金庫から昇格したところもあります。総数は二〇一一年夏現在、四二行です。さて、本節で論じる信金、信組ですが、それぞれに「信用金庫」、「信用組合」が正式名称です。銀行(メガバンク、地銀、第二地銀)との業務上の違いは、現在では先述のとおり、ほとんどありません

。無尽という仕組みが発展してできた点では、相互銀行(現在の第二地銀)と似ています。無尽とは、一定の口数と金額を決め、定期的に掛け金を払い込ませて、一口ごとに抽選、入札、談合などにより、掛け金を払った者に対して、金銭以外の財産を与えること(物品無尽)、金銭を与えること(金銭無尽)ですが、金銭無尽会社から発展したのが、相互銀行でした。今では無尽を本業としている会社はほとんどないといわれています。ともかく、信金も信組も銀行とほぼ同じ業務を行っていると考えて差し支えありませんが、信金は非営利組織として誕生し、株式の代わりに「出資金」を会員(銀行ならば利用者、つまり預金者や借入者)が払い込む点が違います。

信組も協同組合組織を取っており、組合員以外からの預金の受入に制限がある(二〇%未満)ことが信金と異なります。信金も信組も営業地域が限られ、融資先が中小企業(信金の場合は資本金九億円以下、信組の場合は三億円以下など)と決められていることなどが銀行との分水嶺となります。中小、零細企業の借り手や個人にしてみれば、銀行も信金も信組も違いはほとんどないのが現実です。準拠法が違うとか、税制優遇が信金、信組には少しあるということは利用者の利便性を変えるほどのものではありません。

江戸時代から続く頼母子講

「頼母子講」、あるいは単に「講」と呼ばれる仕組みが過去の日本では一般的でした。父の世代が現役であった頃(二〇〇〇年以前)までは、まだ一般的だったように思います。これは庶民金融の一つの形態であり、広く「無尽」の範躊に入ります。江戸時代以前、どうやら鎌倉時代の頃からあったようです。貞永式目(鎌倉幕府が武家の統制のために発布)にも講に関する記述があるようです。となると由来は平安時代ということになるのかもしれません。黒豆に相当する拠出金は講に参加する人数やその規模によりますが、父の話だと数千円という額だったように記憶しています。

仮に三〇人が参加する講があり、それぞれが毎月、三千円ずつ拠出すると一人が一回に九万円もらえることになります。通常、講には利息がつきません。その代わり、自分が拠出した金額の累積はいつか(返して)もらえるという安心感があります。これは口約束でしょうが、仮に不義理をする(もらうだけもらって逃げる、あるいはもう拠出金を出さない)ということになると、村八分にあいます。葬式と火事以外の付き合いを周囲が絶ってしまうので、その地域に住み続けることが難しくなるのです。町であれ、村であれ、商工業者の間であれ、農民同士であれ、この講という仕組みは日本で長く機能してきました。

沖縄では「模合」と呼ぶようです。今でも沖縄県の金融の一割ほどはこの模合でまかなわれているといわれています。共同体がしっかりしている場所、時代では講が充分に機能します。保険というより、相互金融によって必要な時、必要な人におカネが回る仕組みになっているのです。そして、その共同体のルールを破る人が出てきた場合でも残った人間が冷静に講を続けてゆけば、大きな破綻はありません。一人一人が損をする金額もせいぜい一回の拠出金程度(数千円ほど)ということになるのですから。この講を利息をつけて、あるいは「掛り」を導入して運営している場合もあるようですが、利息を取って継続的に行うと世話人は実質的に金融業者(金貸し)、無尽会社ということになります。

この「無尽会社」が発展したものが、現在の「第二地方銀行」や「信用金庫」、「信用組合」などです。といっても現在では彼らは古い講を運営しているのではなく、普通の銀行業を行っています。由来が無尽会社であり、相互掛け金を元手(つまり預金)としてカネを貸している(融資)という建前を取っているところが、銀行法に基づいて預金を受け入れている銀行と少し違います。いずれにせよ、現在の第二地銀、信金、信組は、第一地方銀行(地銀)、信託銀行、メガバンクなどの銀行とほとんど同じです。準拠法が違い、ちょっとした税制優遇があり、銀行検査が少し緩い程度の違いにすぎません。

貸金業法改正や総量規制施行の発端

ショッピング枠で買い物をさせ、品物を安く買い取って、迂回融資している集団のことが話題になりますが、サラリーマンであれ、主婦であれ、本当にカネに困るとこうした割に合わないことにまで手を出してしまう恐れを総量規制は助長しています。ショッピング枠は規制外というのもこ今した悪辣な手口をのさばらせることになっているのです。そもそも貸金業法改正や総量規制施行の発端となったのは、サラ金や街金による高金利や非常識な取り立てであることは事実ですが、「借り手にも厳しいお灸」をすえようとしたことが、総量規制の趣旨です。

借り手の自制というと奇麗に聞こえますが、失業したサラリーマンや倒産した事業主にとっては、この総量規制は資金調達(借入)の道を閉ざすものです。長期化しなければ、年収を超える借入を行っていても返済は可能です。失業者なら復職を、事業主なら再チャレンジで新たな年収を得ることができます。それまでの「つなぎ」の借入さえも政府と貸金業者、そして銀行によって拒まれるとすれば、再挑戦も覚束なくなります。ここのところが金融当局にはよくわかっていないようです。

総量規制にこうした負の側面があることがわかっていて改正した政治家にも責任があります。街金の復活など望んでいませんが、総量規制の撤廃によって得られるメリットのほうがデメリットよりも多いと断言できます。繰り返しになりますが、サラ金、クレジットカード会社によるキャッシング規制として施行された総量規制にも銀行は無縁ではありません。銀行グループに反省を求めたいと私がいうのは、銀行はこうした子会社(サラ金、クレジットカード会社、不動産ローン専業会社など)を親会社としてコントロールしているからなのです。

銀行ローンを借りることができなくなった人(失業者や倒産した事業主)にサラ金やキャッシングに向かわせ、そこで退路を断つというのは褒められる態度ではありません。銀行グループとしてサラ金やカード会社などを維持したいのなら、総量規制の撤廃を当局に訴えるか、思い切って傘下の会社を売り払うべきでしょう。現在の日本では、銀行とサラ金、カード会社は一体であることを忘れてはなりません。

お金借りる即日

総量規制の根拠となる「貸金業法」

先ほど、零細企業の個人の懐と法人のそれは同一といいました。零細企業の社長が会社のために資金調達する(つまり借りる)のは、個人で借りるのと大差はないのです。厳密には分離すべきですが、社長やその一族の個人が作り、支えている零細企業では、こうした財布の混同はある程度、やむを得ないところがあります。会社で必要な資金の調達を個人で行っていると、時には貸金業者(サラ金やカード会社など)から軽い気持ちで借りてしまうことがあります。このために総量規制でいうところの「年収制限」に引っかかってしまうのです。

先ほどの知人の例でいえば、年商一千万円の会社が社長に払える給与はせいぜい半分の五百万円です。その年収五百万円で貸金業者から借りることのできる金額は百七十万円くらいということになります。ところが、会社がそれ以上の資金を必要としている場合、銀行(信金ほかも含む)からも借りる必要が出てきます。こうした場合、信用情報は貸金業者の間に留まらず、その親会社である銀行にも回ります。もし、年収制限でカード会社やサラ金との間で設定しているキャッシング枠や借入枠が停止、減額などされていると、銀行の信用審査にも影響が出てきてしまうのです。

という訳で、銀行から一円も借りていない零細企業がいざ銀行借入を行おうとすると、社長が個人で借りているキャッシングやサラ金での信用悪化が影響して、借りることができなくなってしまうという事態が起こってきます。不動産を所有していてもリフォームローンを銀行から借りることができない、住宅ローンも審査が通らないということにもなります。つまり、銀行傘下の子会社、消費者金融会社(サラ金)、クレジットカード会社から小額の借入をしていると「総量規制」という、私たちにいわせれば悪い仕組みにより、零細企業や富裕でない個人は誰からも借りることができなくなってしまうのです。

総量規制という失政

総量規制とはどのようなものでしょうか。みなさんはすでにご存じかもしれませんが、ざっとおさらいをしておきます。金融庁のホームページには、総量規制について、こんな説明があります(わかりやすいように、必要部分を抜粋、編集しています。)。総量規制とは、借り過ぎ、貸し過ぎを防ぐために設けられた規制です。具体的には(貸金業者・銀行は除く)からの借入残高が年収の三分の一を超える場合には新たな借入はできなくなります。たとえば、年収三百万の人は貸金業者から百万円しか借りることができません。

複数の貸金業者から借りている場合、すべての貸金業者からの借入の合計が年収の三分の一以下であることが必要です。借入残高が年収の三分の一を超えているかどうかの判断は、データを厳格な情報管理のもと、「指定信用情報機関」に集めることになっていますが、貸金業者は指定信用情報機関を利用し 借り手の借入残高を把握します。住宅ローンや自動車ローンは、総量規制の適用除外となっています。法人向けの貸付は総量規制の対象外となっていますが、個人事業者の方は、事業・収支・資金計画を提出し、返済能力があると認められる場合には、上限金額に特段の制約なく借入が可能です。

クレジットカードを利用した借入(キャッシング)については、総量規制の対象となりますので、年収の三分の一を超える借入がある場合、新たな借入はできません。一方、クレジットカードを使った商品購入(ショッピング)は、貸金業法の規制の対象外ですので、年収の三分の一を超える借入がある場合でもクレジットカードで買い物をすることは可能です。総量規制の根拠となる「貸金業法」は二〇〇六年(平成一八年)一二月に施行されましたが、二〇一〇年(平成二二年)六月から、ここで述べている総量規制が実施されることになったのです。

この総量規制がなぜ零細企業やあまり豊かでない個人を苦しめているか、というのはこういうことです。銀行や信金、信組、各種公庫(労働金庫など)による貸付は総量規制の対象外となっていますが、銀行傘下の貸金業者は対象に含まれているのです。つまり、銀行子会社であるクレジットカード会社からのキャッシングや貸金業者(消費者金融会社=サラ金、不動産ローン専業会社など)からのローンは、総量規制によって縛られるということです。

(不動産ローン専業会社、クレジットカード会社など)から借りにくくなった直接の原因

バブル崩壊以前(一九八〇年代)は、不動産を所有してさえいれば、銀行は喜んで貸してくれました。しかし、九〇年代の不動産大不況(住専問題がその一つです)により、不動産神話が崩れ、オフィスビルであれ、マンションであれ、不動産を持っているだけでは相手にしてくれなくなりました。続いて、銀行(正確には銀行グループ)に対する別の知人の怒りをご紹介します。この知人は定年退職を間近に控え、老後の資金を確保するためにいくつかの質問をしに銀行を訪れました。知人はこのまま帰って、リバースモーゲージは日本ではないと割り切って忘れることにしたそうです。ところで、リバースモーゲージというのは米国で普及している不動産担保ローンのことです。

ただし、日本の銀行が提供している住宅ローンと違って、高齢者でも不動産さえ持っていれば、借りることのできるローンです。通常の不動産担保ローンは、将来の収入を返済の原資として組み立てられていて、ローン残高は年数が経るに従って段々と減ってゆきます。これに対して、リバースモーゲージは所有不動産の価値まで借りることのできるローンで、年数が経つに従って、ローン残高はどんどん増えてゆきます。所有者が亡くなるとそこで不動産を売って、銀行はローンを回収します。不動産価値が下がったらどうするか、借り主が予想外に長く生きて、ローン残高が不動産価値を上回ったらなどについては、米国の銀行などは長年の経験から対応する術を持っています。

具体的にこの場合はこうだと普遍化することは難しいのですが、全体として銀行も借り主も損をしない仕組みができ上がっています。ローン残高が不動産価値を上回ったら、借り主がどんなに高齢でも家から追い出す、といったようなことは起こらないことになっています。リーマンショックの原因となったサブプライムローンの場合は、リバースモーゲージと違って借り主が充分に保護されておらず、返済が少しでも滞るとすぐに家を強制売却されたという話が伝わっています。そのような非人道的なローンとリバースモーゲージは違うものだと考えていただいてよいと思います。一方、日本の銀行でリバースモーゲージを行っているのは、私の知る限りわずか二行です。

しかし、どちらも非常に使い勝手が悪く、将来使うことがあるかもしれないと考えていた、さらに別の友人も大変失望したと語っていました。この友人は近々、五五歳になりますが、彼の持ち家や収入の条件ではどうやらリバースモーゲージを借りることはできないようです。日本のリバースモーゲージは、結論からいうと少数のお金持ちだけのもので、しかもまだ元気なうちにしか借りることができない、とても限定的な商品のようです。個人や零細企業が銀行やその傘下にある子会社(不動産ローン専業会社、クレジットカード会社など)から借りにくくなった直接の原因は、私は「総量規制」にあると考えています。